
こんにちは。レティシアンスタッフのTです。
突然ですが、皆様の愛犬は何歳でしょうか?
実は私は最近、2ヶ月の豆柴の女の子をお迎えしました。 この子は2代目で、先代犬(豆柴)は介護期を経て17歳で亡くなりました。
※介護期のコラムについてはここから
【シニア犬の介護】 ~愛犬の最期への心構え、簡単なケアについて~
シニアの子をお世話していた記憶が新しいため、久しぶりに迎えた子犬の体力に驚かされる日々が続いています。
しかし、この元気いっぱいな子犬も年を重ね、やがてシニア犬となる日が来ます。
頭では理解していても、若いうちは老いた姿を想像しにくいものですし、実際に年を取り始めたとしても、その変化を受け入れるのは簡単なことではありません。
かつての私も、先代犬が9歳になっても「うちの子はごはんもたくさん食べるし、散歩でも元気に走り回るからまだまだ若い」と思っていました。しかし、 15歳になった頃に突然倒れて寝たきりになってしまい、そこで初めて「愛犬の老い」を現実として突きつけられました。
それまでに出ていたサインを見過ごしていた私は、こうした急な変化に心がついていけませんでした。今でも鮮明に覚えています。
この経験から「老化は事前に受け入れる準備が必要だ」と痛感しましたし、シニア期の介護をとおして「老いは決してマイナスなことばかりではない」と感じるようになりました。今回はそうした経験を踏まえて “愛犬の介護・終活” などについて皆様にお伝えできればと思います。
目次
犬のシニア期はいつ始まるのか
犬のシニア期は、体の大きさで開始年齢が異なります。
一般的には「平均寿命の半分を超えたらシニア期」とされており、小型犬は8〜9歳頃、中型犬は7〜8歳頃、大型犬は6〜7歳頃からがシニア犬の仲間入りと言われています。
シニア犬の体の変化
聴覚が鈍くなる
加齢により聴覚器や内耳神経が変化し、音の信号をうまく伝えられなくなります。
これを「老齢性難聴」といいます。
犬たちは耳が遠くなることで環境把握が難しくなり、不安を感じやすくなります。
このため、シニアになって聴覚が鈍くなった時に備えて、愛犬が若いうちから声だけでコマンド・合図を出すのではなく、オーナー様の身振りと合わせて行うといいでしょう。こうしておくと愛犬の聴覚が鈍ってからでもコミュニケーションがとりやすくなります。
視力が悪くなる/眼が白くなる
元々犬は視力が悪い(視力としては0.2~0.3程度)のですが 、昔に比べて物や壁にぶつかることが多くなると視力が悪くなっている可能性があります。
原因としては、老化による病気の発症が考えられます。
主な眼の病気としては、緑内障・白内障・進行性網膜委縮・ブドウ膜炎などが挙げられます。眼の病気の中には、糖尿病など他の病気が原因となって発症するものもあるので、視力低下のリスクを下げるためにも定期的な健康診断を受診しましょう。
また、眼が白くなってしまうシニア犬も多いのですが、必ずしも「眼が白い=白内障」というわけではありません。加齢にともない、水晶体中心に存在する繊維の密度が高くなることで生じる「核硬化症」という状態でも、眼の中心が白く見えることがあります。核硬化症は病気ではなく加齢に伴う正常な変化で、ほとんど視覚に影響を与えることもないので、一般的に治療の必要はないとされています。
その他にも、眼に傷がついてしまったり、重度のドライアイによって、眼の表面が白くなることもあります。
愛犬の眼の様子に変化があったら、動物病院で一度チェックしてもらいましょう。
皮膚の変化
人間の皮膚は老化すると、皮膚組織の加齢性変化によってシワが増えます。犬の場合は明確には分かっていないものの、加齢に伴い皮膚の組織に変化が起きているのではないかと考えられています。
また、その他にも、皮膚腫瘤(できもの)、被毛の乾燥、色調の変化などの症状が現れることがあります。
こうした変化には個体差があり、生活環境・遺伝的要因・犬種など、さまざまな要素が複雑に影響し合って、見た目の違いとして現れると考えられています。また、乾燥や色の変化などは、加齢だけでなく、ホルモンの病気、食事内容とも関係していると言われています。
健康な皮膚を保つためには、常に清潔を保ち、スキンケアなどによって皮膚の水分を補うことが大切です。
◎スキンケアの例
・皮膚への摩擦・刺激を軽減するために、シャンプー剤はしっかり泡立ててから使う
・毛の流れに沿って洗う、ゴシゴシと強くこすらない
・シャンプー後に保湿剤を使用する など
食事も重要です。皮膚はタンパク質・必須脂肪酸・亜鉛などの栄養バランスの取れた、年齢に合わせた食事を与えましょう。
シニア犬になると外傷などの治りも遅くなる傾向があるため、皮膚の健康や栄養状態により一層の配慮が必要になります。
筋力の低下
小型犬では10歳頃から、大型犬では5歳頃から筋肉量が減少する傾向にあり、「足腰が弱くなった」と感じることが多くなります。
また、筋肉量の減少に加えて、骨・関節・神経の病気などによって、活動性の低下や歩くときの姿勢の変化などが生じたり、骨や関節の疾患で歩幅が狭くなったり、背中を丸めて歩く姿勢が増えることもあります。
段差の上り下りを嫌がったり、散歩に行きたがらなくなる場合は、単なる加齢による筋肉量の減少だけでなく、体のどこかに不調を抱えている可能性も考えられます。 まずは動物病院で愛犬の様子を診てもらい、必要なケアをしてあげましょう。
シニア犬の行動の変化
攻撃行動が増える
加齢とともに、唸り声・威嚇・噛みつきといった攻撃的な行動が増え「怒りっぽくなった」と感じるオーナー様が多いようです。
こうした変化は痛みや不快感が原因となっている場合が多く、特に関節炎やその他の病気・不調などを患っている犬では、自分の身を守ろうとする防御反応として現れることがあります。
また、加齢にともなって愛犬の認知機能が低下すると不安や恐怖を感じやすくなり、自分を守るために攻撃行動をとることがあり、脳腫瘍や脳炎といった脳神経系の病気によって愛犬の行動に変化が現れることもあります。
愛犬が怒りっぽくなったと感じたときは、体のどこかに不調が隠れている可能性があるため、早めに動物病院で診てもらうことをおすすめします。
昼間に寝ることが増える
認知機能が衰えてくると、睡眠と覚醒のサイクルが乱れることがあると言われています。
昼間に寝ている時間が増え、夜間に目を覚ましている時間が長くなる場合は、その兆候かもしれません。
体に不調がある場合も、痛みや不快感のために眠りが浅くなったり、尿路感染症や腎臓病などによる頻尿で何度も起きてしまうことがあります。
愛犬の睡眠の質を改善するためには、周囲の環境や生活の工夫をしてあげることが重要です。
愛犬に目立った病気の兆候がなくても、「愛犬の寝ている時間が長くなったな」と感じるようになったら耐圧分散や吸湿性に優れた高機能なベッド(マット)に切り替えてあげるなど快適な寝床を用意してあげることが、睡眠の質を改善するうえで効果的です。
また、寝床周囲の暗さ・静かさ・温度・湿度を適切にしてあげることも重要です。愛犬の寝床の近くでオーナー様が夜遅くまで明かりをつけて活動したりすることのないように注意しましょう。
さらに日中・昼間の活動量を確保してあげることも、睡眠-覚醒サイクル(体内時計)の乱れを防ぐために有効です。
これには「日光を浴びること」と「食事のタイミング」が重要だといわれています。お散歩や日光浴によって愛犬が日光を浴びる機会を作ってあげたり、食事を与える時間を規則正しくし、深夜に食事を与えないようにすることで、愛犬の睡眠-覚醒サイクル(体内時計)の乱れを防ぐ効果が期待できます。
また、シニア犬の体調に合わせて、散歩やボール・おもちゃを使った遊び、知育トイやノーズワークマットなどを活用した探索遊びなど、日中に軽い運動や頭を使う遊びを取り入れることで生活のリズムが整えられます。
なお、加齢による感覚器や脳の機能低下が進むと、「犬の認知機能不全症候群」を発症する可能性もあります。早期にサインに気づき、適切な対応をすることが大切です。
シニア犬が過ごしやすい環境を整える

温度や湿度
部屋の温度は25度前後、湿度は50%前後が快適と言われています。
ケージ
普段から休める場所として用意しておきましょう。
加齢にともない認知機能が低下すると、目的などもなく、ご自宅のなかを歩き回る行動をとることがあります。その際に、歩行障害があったり視覚が鈍くなったりすると、体をあちこちにぶつけてしまう可能性があります。
愛犬が歩き回ってしまう場合は、角やすきま・段差をなくすようにクッションを使用したり、円形サークルを使用したりして愛犬がケガをしないように工夫してあげましょう。
寝床
シニア犬は、若い頃に比べて寝ている時間が圧倒的に長くなります。そのため、体に負担の少ないマットを用意してあげることが大切です。
寝たきりの状態になった場合には、床ずれ(褥瘡)を防ぐために、数時間おきに体位を変えてあげたり、軽いマッサージを行って血流を促してあげましょう。
マットは、肌触りが良く、耐圧分散性のものがおすすめです。また、設置場所にも配慮が必要で、エアコンの風が直接当たる場所は避けるようにしましょう。

食事
年齢を重ねると、床に置いた食器での食事姿勢がつらくなってくることがあります。そのため、食器の位置は愛犬が食べやすいように高さをつけて、食べやすい姿勢をサポートしてあげましょう。
ただし、高すぎると食べにくくなったり、空気を一緒に飲み込んでしまうこともあるため、愛犬が立っている状態で自然に口が届く高さを選ぶことが大切です。
補助台としてワイヤー製の花台を代用するケースもありますが、認知機能が低下している子や運動機能が低下している子の場合は、足や顔が隙間に挟まる事故のリスクがあるため注意が必要です。
食事内容についても、ドライフードをふやかす・とろみをつける・缶詰と混ぜるなどの工夫をすることで、食べやすくなります。
また、いつでも水分補給できるように、新鮮な水を1箇所だけでなく複数の場所に用意しておくことも大切です。
シニア期のワンちゃんは脱水傾向になりやすく、自発的にお水を飲む量も少なくなる場合があります。お水をあまり飲んでくれない場合は、ウェットフードを使って「食事と一緒に水分を摂ってもらう」ようにすることも効果的です。
床材
シニア犬の足腰への負担を軽減するためには、滑りにくい床材を選ぶことが大切です。
フローリングのような滑りやすい床には、滑り止めマットやジョイントマットなどを敷くことで、転倒や関節への負担を予防できます。
一方で、絨毯はクッション性があるものの、爪が引っかかって転倒やケガにつながるおそれがあるため注意が必要です。特に巻き爪や足の力が弱くなったシニア犬には、目が粗くない素材やループのないタイプのものを選ぶと安心です。
安全対策
階段やキッチンなどの危険な場所には、柵やゲートを設置して立ち入れないようにしましょう。
また、シニア犬の生活スペースには、できるだけ家具(椅子や机など)を置かないようにし、転倒や衝突によるケガを防ぐことが大切です。特に家具の角にはクッションガードを取り付けるなど、安全面に配慮した環境づくりを心がけましょう。
マッサージやストレッチ
マッサージやストレッチは、筋肉の血行を促進し、柔軟性を保つのに効果的です。シニア犬にとっては、運動量が減ることで筋力や関節の可動域が低下しやすいため、日々のケアとして取り入れてあげると良いでしょう。
ただし、関節痛や体に痛みがある場合は、無理のない範囲で慎重に行いましょう。
初めて挑戦する場合や、自分で行うのが難しいと感じる場合は、ペットのリハビリ施設を利用したり、獣医師さんやグルーマーさん、トレーナーさんなどの専門家に相談するのもおすすめです。
お手入れ
シニア犬になると、散歩の頻度が減ったり歩き方が変わったりすることで、爪が伸びやすくなることがあります。
爪が伸びすぎると、歩行に支障をきたしたり関節に負担がかかってしまうこともあるため、定期的に爪の状態をチェックしてあげましょう。おうちで爪切りが難しい場合は、動物病院やトリミングサロンなどで専門家にケアをお願いしましょう。
散歩について
シニア犬になると、気管が弱くなったり、首(頸部)を痛めやすくなるため、首輪よりも胴輪(ハーネス)の使用がおすすめです。
また、足腰が弱くなっている場合は、ペットショップなどで購入できる歩行補助用のハーネスを併用すると、体への負担を軽減しながら安全にお散歩できます。
歩行が難しくなったワンちゃんであっても、バギーや抱っこなどで外に出て、日光や外気に触れることは重要です。良い気分転換になり、認知機能の低下を防ぐ効果も期待できます。無理のない範囲で、その子に合ったスタイルでお散歩の時間を楽しませてあげましょう。
シニア犬の排泄・トイレ問題について
トイレを設置する際は、なるべく段差をなくすようにしましょう。
足腰の弱ったシニア犬でも入りやすくなるよう、スロープをつけてあげるとより安心です。
また、シニア期に入ると、下記のような様々な理由によって排泄の失敗が増えてしまうことがあります。
・病気によって尿量や排尿頻度が増える
・神経・筋骨格系の異常、活動性の低下によってトイレまで移動するのが大変
・排尿姿勢をとるのが難しい
・知覚(五感)、認知機能の低下によって、トイレの場所や形態が分からない
・排泄習慣をわすれてしまう
・認知機能低下にともなう不安
・恐怖による失禁 など

【対策1】排泄スケジュールを見直す
愛犬の排泄タイミングの記録をとり、そのタイミングに合わせてトイレに連れていき排泄を促しましょう。食事や散歩などの日課を毎日同じ時間で規則正しく行うことによって、排泄タイミングも整ってきます。
【対策2】就寝前にトイレに連れていく
就寝前には必ずトイレに連れていき、排泄を促すようにしましょう。
寝床で排泄してしまうことを防ぐのに加え、夜間にトイレに行きたくなって目が覚めることを防ぐことができます。
【対策3】トイレや周囲に滑り対策を行う
トイレの周囲に滑りにくいマットを敷いたり、ペットシーツを滑りにくい布製のものに変更してあげることでふんばりやすくなり、シニア犬でも排泄しやすくなります。
【対策4】トイレに自力で辿り着きやすくしてあげる
視覚が鈍くなっている場合、トイレまでの道筋にライトを設置して分かりやすくしてあげたり、トイレのニオイを少し残しておいて、嗅覚を頼りにトイレに辿り着けるようにしてあげましょう。
また、トイレまでの道筋にマットを敷いて、足の裏の感覚からトイレに辿り着けるようにしてあげたり、トイレの周囲を壁で囲って、「ここからここまでがトイレ」であることを分かりやすくすることも効果的です。
【対策5】トイレを増設する
シニア犬がトイレまで移動するのが困難になっている場合、寝床の近くにトイレを増設してあげることで排泄の失敗を減らすことができます。
なお、もともと設置しているトイレを撤去してしまうと愛犬が混乱してしまう可能性があるので、トイレの移動よりも「増設」が理想的です。
また、犬用のおむつやマナーベルトの使用を検討しましょう。
特に、若いうちからおむつやマナーベルトに慣れさせておくことで、いざというときに愛犬のストレスを軽減することができます。
愛犬の終活について

終活とは、「残された時間をより良く生きるための準備のこと」を言います。
近年では、ペットに対しても終活を行うペットオーナー様が増えてきました。愛犬を迎えた以上、最期まで責任を持って寄り添うことは、私たちペットオーナーの大切な務めだと言えるでしょう。
「終活」と聞くと、“死の準備” というイメージが強く、どうしてもマイナスに捉えてしまいがちです。しかし、私が受講したエンディングセミナーでは、「終活とは、悲しいものではなく “今” を楽しく生きることを考える機会である」と教わりました。
ペットとのお別れについては、どんな形であっても、どんな選択をしても、少なからず後悔は残るものです。しかし、事前に終活をしておくことで、その後悔の深さや受け止め方は大きく変わってくるでしょう。だからこそ、終活は愛犬が元気なうちにこそ考えておくべきことだと強く感じています。
では、具体的に愛犬の終活としてどのようなことを考えておけば良いのでしょうか?
・信頼できるホームドクターを見つけておく
・近隣の動物病院の一覧をまとめておく
・医療費、介護、延命治療についての考えを整理する
・葬儀や供養の方法を検討しておく
・「やっておきたいこと」「後悔しそうなこと」をリストアップする など
前向きな終活をすることで、今この瞬間をより大切に、豊かに過ごせるようになります。
その積み重ねが、かけがえのない思い出をつくることにつながると私は信じています。
まとめ

愛犬のシニア期というのは、なかなか受け入れがたいものです。
私自身もボールを追いかけて元気に走る若いワンちゃんを見るのがつらくなる時期もありました。そう感じること自体はとても自然で、誰にでもある感情だと思います。
しかし、後から振り返って視点を少し変えてみると「シニア期は、思い出をゆっくりと積み重ねていく時間なんだ」と思えるようになりました。
たとえば、愛犬が日中に窓の外をぼんやりと眺める表情や、ゆっくり歩く姿など。どれもすべてかけがえのない愛おしい瞬間です。
シニア期には、シニア期にしか味わえない “特別な時間” があります。
今まさにその時期を迎えているオーナー様にとって、このコラムが少しでも心の支えとなり、焦らずにその特別な時間を大切に過ごすきっかけになれば幸いです。
