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《獣医師コラム》目が白い=「白内障」とは限らない!? ワンちゃん・ネコちゃんの目が白くなる原因は?

こんにちは、レティシアン専属獣医師のWです。

ワンちゃん・ネコちゃんの目が白くなっているのを見つけた場合、多くの方は「白内障」の可能性を考えられるのではないでしょうか?

しかし、ワンちゃん・ネコちゃんの目が白くなる原因は白内障だけではありません。

白くなった部位によって原因となる病気は異なり、時には病気ではない生理的な変化でも目が白くなることもあります。

今回のコラムでは、ワンちゃん・ネコちゃんの目が白くなる原因について解説していきます。

「角膜」や「水晶体」など、意外と知らない目の構造

ワンちゃん・ネコちゃんの目が白く見えるとき、「目のどこが白くなっているのか」によって重症度や治療内容が異なります。

ワンちゃん・ネコちゃんの目の構造は人間とほとんど同じで、様々な役割をもつ部位が協力し合って機能しています。

目の部位の名称と機能

正常な目の場合、光は角膜→瞳孔→水晶体→硝子体の順に通過して網膜に届き、そこで映像として認識されます。
角膜・水晶体・硝子体は透明であるため光を通しますが、これら透明な部分に何らかの原因で濁りが生じると、その部分が白っぽく曇って見えるようになります。

以下では、ワンちゃん・ネコちゃんの目が白く見える代表的な病気や状態について、その特徴と見分け方を解説していきます。

まずは外側をチェック!目の表面が白く見える病気

目の表面が白く見える原因は、主に角膜の病気が挙げられます。
今回はその中でも特に多い、角膜潰瘍(かくまくかいよう)について解説していきます。

角膜潰瘍(かくまくかいよう)

角膜潰瘍とは?
黒目の表面を覆う透明な膜である角膜の一部に傷がついてしまった状態を指します。

原因
角膜は厚さわずか 0.5 mm 程度と非常に薄く、ちょっとした外傷や異物の刺激でも傷がつきやすい組織です。
枝や砂、まつ毛、あるいは鋭い爪などで傷がついてしまいます。
さらにドライアイで涙が不足しているワンちゃん、あるいはヘルペスウイルスを持つネコちゃんの場合も、角膜表面のバリア機能が低下して角膜の傷が悪化しやすいことが知られています。

症状
角膜に傷ができると目に強い痛みや違和感が生じるため、以下のような症状が認められることがあります。
 

行動の変化
・ 目を細める
・ 目をショボショボさせたり頻繁に瞬きをする
・ 目を前足でこする
・ 目を家具などにこすりつける

目の変化
・ 涙や目ヤニの量が増える
・ 黒目の部分が白くかすんで見える
・ 黒目の部分に灰色の斑点が浮かんでいるように見える

 
また、角膜潰瘍が悪化すると、角膜に穴が開いてしまう「角膜穿孔(かくまくせんこう)」を生じてしまうことがあります。
角膜に穴が開くことで細菌感染・緑内障・眼球の炎症を起こしやすくなり、失明に至ることもあります。

治療
角膜潰瘍の治療は、以下の3点が基本となります。
1.  目に傷をつけてしまった原因を特定して対処する
 

角膜潰瘍の主な原因と対処法

・まぶたの内側に逆さまつ毛が生えている場合
→ 逆さまつ毛を抜く

・まぶたの内側にできものがある場合
→ 手術でできものを切除する

・感染症の場合
→ 抗菌薬の目薬や飲み薬を使用する

・ドライアイの場合
→ ドライアイが生じている原因を特定して治療する

 

2.  目薬を使用する
抗菌薬や角膜保護剤など、目の状態に合わせて複数の目薬を使用することもあります。
目薬による治療を行ってしばらくすると目の表面が透明に戻ってきます。
しかし、ここで目薬をやめてしまうと、目に見えないほどの小さな傷が残っていた場合、再び傷が深くなってしまうことがあります。
完全に元に戻っているように見えても、獣医師から治療終了の指示があるまでは、決められた回数の点眼を続けるようにしましょう。

3. エリザベスカラーを装着する
目の傷によるかゆみや違和感、目薬の刺激などによって、ワンちゃん・ネコちゃんが目を家具などにこすりつけたり、自分の手足でこすったりしてしまうことがあります。
これにより角膜の傷が悪化する恐れがあるため、目を物理的に保護して、傷の悪化を防ぐ目的でエリザベスカラーを装着することがあります。
軽度の潰瘍であれば 1〜2 週間の点眼とエリザベスカラーの装着で治癒しますが、傷が深い場合には、角膜を保護するための手術が必要になることもあります。

予防
角膜潰瘍の多くは外傷や目の乾燥が原因で発症するため、これらから目を守るためのケアが重要です。特にパグやシーズーなどの短頭種のワンちゃんでは、鼻が短く皮膚がたるんでいるため、木の枝やワンちゃん自身の顔の毛が目に当たりやすいため注意が必要です。
 

角膜潰瘍の予防に役立つ日常ケア

・お散歩の後に目の周りを拭きとる、水で優しく洗う
・顔まわりの毛を短く保ち、目に入りにくくする
・ドライアイの子の場合、目の潤いを保つ点眼を定期的に行う

 

目の中が白く見える代表的な病気

目の中が白く見える原因には、房水や水晶体、硝子体などが関係しています。
今回はワンちゃん・ネコちゃんで多い白内障・緑内障・ぶどう膜炎について解説していきます。

白内障(はくないしょう)

白内障とは?
目の中でレンズの役割を担っている水晶体が白く濁ってしまう病気を「白内障」と呼びます。

原因
ワンちゃんの白内障は、加齢・遺伝・糖尿病・外傷・感染など、様々な原因によって発症することが分かっています。加齢によって生じる「老齢性白内障」は、大型犬では7歳以上、小型犬では9歳以上での発症が多いと言われています。

一方、ネコちゃんでは白内障の発症はまれで、外傷やぶどう膜炎(後述)が原因で発症することがほとんどです。

症状
レンズの役割を果たしている水晶体が白く濁り光を上手く通せなくなるため、以下のような症状が現れます。
 

・目が見えにくくなる
・明るい場所をまぶしがる
・家具などにぶつかりやすくなる

 
また、白内障が進行すると、ぶどう膜炎(後述)や緑内障などの他の目の病気の原因となることがあります。

治療
視力の回復や失明リスクを減らす根本治療のための「外科手術」と、白内障の進行を遅らせたり合併症を予防する目的での「点眼治療」の2種類があります。
ワンちゃんの白内障は、手術によって視力が回復する可能性が高く、白内障が原因で発症する他の目の病気を予防できる場合もあります。
しかし、白内障の手術には特殊な器具が必要となるため、すべての動物病院で手術ができるわけではありません。眼科専門の動物病院への紹介が必要なこともあるので、「白内障かも…?」と思ったら、早めに動物病院で相談しましょう

緑内障(りょくないしょう)

緑内障とは?
眼球内の圧力(眼圧)が病的に上昇することで目の奥にある視神経が障害される病気です。

原因
緑内障には「房水」と呼ばれる目の中を流れる液体が関係しています。
炎症などにより、常に目の中を流れている房水の出口が塞がれてしまい、目の中に房水が溜まっていくことで、眼圧が高くなってしまいます。
ワンちゃんでは遺伝が関与していることも多く、イングリッシュ・コッカー・スパニエルやシベリアン・ハスキー、ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリーバーなどの犬種で発生することが多いと言われています。
ネコちゃんの場合は、他の病気が原因で緑内障を発症することが多く、慢性ぶどう膜炎(下記参照)が原因となるケースが大半です。

症状
緑内障になると角膜が水ぶくれ状に濁って青白く見えるほか、目が大きく膨らんで見えることもあります。その他の症状として、痛みで元気や食欲がなくなったり、涙が増えたり、白目の充血などが見られます。
眼圧の急激な上昇は目の激しい痛みを伴い、放置すると短期間で失明に至る可能性があるため、早期発見と早期治療がとても重要になります。

治療
緑内障の治療は、眼圧を低下させるために、点眼・注射・手術などを組み合わせて行います。発症してからできるだけ早く治療を開始することが視力の温存やその後の治療内容に大きな影響を与えるので、ワンちゃん・ネコちゃんの目の様子がおかしいと感じたらすぐに動物病院を受診するようにしましょう。

ぶどう膜炎

ぶどう膜炎とは?
ぶどう膜は虹彩・毛様体・脈絡膜という3つの組織をまとめた名称で、これらの部分に炎症が起こることを「ぶどう膜炎」と呼びます。



 

原因
ぶどう膜炎の原因は多岐にわたり、一般的には以下のようなものがあげられます。
 

ぶどう膜炎の主な原因

・外傷
・感染症
・犬ウイルス性肝炎
・レプトスピラ症
・猫白血病(FeLV)
・猫免疫不全症候群(猫エイズ、FIV)
・猫伝染性腹膜炎(FIP)
・免疫機能の異常
・糖尿病
・高血圧症 など

 
症状
目の表面を覆う角膜が白く曇ったように見えたり、房水の性質が変化して目の中が濁ったように見えたりします。
まぶしそうに眼を細める、涙が出る、目の充血などの症状が出ることがあり、重症化すると目の中に膿がたまってしまうこともあります。

治療
ぶどう膜炎は放置すると白内障や緑内障など二次的な合併症を引き起こすため迅速な治療が必要です。
原因に応じた治療に加え、炎症を抑える点眼や痛みを軽減する点眼などを組み合わせて行います。

病気以外にも!目が白くなる現象

核硬化症(かくこうかしょう)

水晶体核硬化症とも呼ばれる、高齢の動物に見られる水晶体の加齢性変化です。

水晶体の細胞は生涯にわたって新しい繊維を産生しています。
古い繊維は水晶体の中心に向かって押し込められていくため、年齢を重ねるごとに水晶体中心部の繊維の密度が高く、硬くなっていきます。
これにより、8歳以上のワンちゃん・ネコちゃんでは水晶体が淡い灰白色~青みがかった濁りを帯びることがあります。

一見すると白内障と紛らわしいのですが、核硬化症は生理的な変化であり、視力へ大きな影響を及ぼしません
治療の必要はなく、加齢に伴う自然な現象として経過を見守ります。
ただし見た目だけで白内障と判別することは難しいため、動物病院で確認してもらうことをおすすめします。

角膜の古い傷跡

過去に角膜潰瘍を発症して目に深い傷がついた経験があると、傷跡が白っぽく残ることがあります。
追加の治療が不要なケースが大半ですが、美容目的で角膜移植などの手術を行う場合もあります。

瞬膜の露出

「目が白く濁っている」と思った場合でも、実は瞬膜(第三眼瞼)という白っぽい膜が目頭からでていただけ、ということもあります。

瞬膜は健康なときは目立ちませんが、ネコちゃんが極度に痩せたり脱水したり、全身麻酔から醒めた直後などに一時的に露出することがあります。
瞬膜の露出そのものは病気ではありませんが、体調不良のサインの場合もありますので、長時間元に戻らない場合は念のため近くの動物病院で相談すると良いでしょう。

病院に行く目安は?-「様子を見る?」「病院へ行く?」の判断

ワンちゃん・ネコちゃんの目が白くなったとき、「受診すべきかわからない」と迷うオーナー様もいらっしゃると思います。

基本的には少しでも異常を感じたら早めに受診することをおすすめしますが、特に以下のような症状が見られる場合は速やかに動物病院で診察を受けてください。
 

急に白くなってきた
数日で急に黒目が白っぽく変化してきた場合。急な目の白濁は進行性の病気や重篤な状態(例:急性緑内障や重度のぶどう膜炎)の可能性があります。

痛みのサインがある
目をしきりにこする、しょぼしょぼと細目にする、まぶしがる、瞬きが増えるなど痛みや違和感のサインがある場合。眼疾患の多くは痛みをともないますが、特に緑内障では強い痛みを示します。

目ヤニや充血がある
白濁とともに目ヤニ(涙や膿)が増えたり、白目部分が充血して赤くなったりしている場合。感染や炎症が起きている可能性が高く、放置すると悪化する恐れがあります。

まぶたや目自体が腫れている
まぶたや眼球が腫れていたり、片目だけ飛び出すように大きく見えたりしている場合。眼圧上昇や腫瘍など重大な疾患の疑いがあります。

視力の低下を疑うような行動が見られる
物にぶつかる、跳んだおやつを見失う、階段を怖がるなど視力の低下を疑うような行動が見られる場合。白内障や網膜の病気が進行している可能性があります。

 
上記のような症状がある場合は早急に受診してください。特に目が明らかに痛そう(落ち着きがない、食欲不振、触ると嫌がるなど)、眼球が突出して見えるような場合は緊急性が高く、夜間であっても迷わず救急対応のできる動物病院に連絡しましょう。

逆に、加齢に伴うわずかな白濁だけで痛みや充血もなく元気・食欲も普段通りという場合は、数日内の都合の良いタイミングで受診いただければと思います。

いずれにしてもオーナー様だけで原因を判断することは難しいため、「おかしいな」と思った時点で早めに動物病院で相談することが大切です。

嫌がられない点眼トレーニングのコツ

いずれの目の病気においても点眼は重要な治療法となります。しかし、ワンちゃん・ネコちゃんが嫌がるために苦労されているオーナー様も多いと思います。そこで、点眼のコツについてお伝えしたいと思います。

1人で行う場合

ワンちゃん・ネコちゃんを後ろから包むように抱え、片手で口元を覆うように顔を上向きに固定します。口元を抑えている方の手で下まぶたをそっと下げます。もう片方の手で目薬を持ちながら上まぶたを持ち上げ、しっかりと顔を抑えられているタイミングで、目薬を垂らします。

2人がかりで行う場合

1人が上記のようにワンちゃん・ネコちゃんを抱え、顔が下がらないように支えます。点眼を行う人が片手で上下のまぶたを開き、もう片方の手で目薬を垂らします。

点眼時のポイント

目薬は、目頭側から静かに滴下すること。目薬が近づいてくると感じさせないため、上まぶた側から目薬を垂らします。その際、容器の先端が被毛やまつ毛に触れないよう注意してください。

・複数の目薬がある場合は、動物病院で指示された時間(多くは5分程度)で間隔をあけてください。

・ワンちゃん・ネコちゃんが暴れてしまう場合には、ワンちゃん・ネコちゃんの後頭部を抑えている人の胸に押しつけるようにすると暴れにくくなります。

点眼するたびにご褒美をあげて習慣化するとスムーズにできるようになります。

まとめ

ワンちゃん・ネコちゃんの目が白く見える原因には、加齢による変化から緊急治療が必要な病気まで、実に様々なものがあります。

日頃からワンちゃん・ネコちゃんの目をよく観察し、少しでも異常を感じたら早めに検査を受けることで失明など深刻な事態を防ぐことができます。

日常のケアとしては、顔周りを清潔に保ち目に傷をつけないよう注意するとともに、定期健診で目のチェックを欠かさないようにしましょう。特にシニア期に入ったワンちゃんやネコちゃんの場合、年に1~2回は健康診断を受けて、白内障や緑内障の初期兆候がないか確認してもらうと安心です。大切なのは早期発見・早期治療と適切なケアです。

オーナーとして「おかしいな」と思うサインを見逃さず、迷ったときは早めに専門家の判断を仰ぎましょう。

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