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≪獣医師コラム≫【ワンちゃんの食糞】「どうしてウンチを食べるの?」原因と対策を獣医師が解説します

こんにちは、レティシアン専属獣医師のJです。

ワンちゃんオーナーの皆様、愛犬の「食糞行動」に悩まされた経験はありませんか?

愛犬が自分自身のウンチを食べてしまったり、お散歩中に他のワンちゃんやネコちゃんのものと思われるウンチを食べてしまったり…。かなり複雑な気分になってしまいますよね。

人間からすると少々ショッキングな食糞行動ですが、「子犬の頃は愛犬の食糞に悩まされたけれど、いつの間にかしなくなった」という方もいれば、「成犬になっても食糞が続いてしまって困っている」という方もいらっしゃるのではないかと思います。

実はこの食糞行動という行為は、子犬にとってはいたって正常な行動なのです。
本来であれば成長に伴って落ち着いていくものなのですが、私たち人間の行動によって成犬になっても続いてしまうことがあります。

今回のコラムでは、ワンちゃんの食糞行動の主な原因と成犬になっても食糞行動が続いてしまう理由、食糞行動への対策などについて解説していきます。

ワンちゃんはなぜ食糞をするの?


ワンちゃんの食糞行動には、ワンちゃんにとって正常な行動として特定の時期にだけみられるものと、食事や健康状態に問題があって生じるものがあります。

授乳中の母犬が子犬を守るため

生まれて間もない子犬は、自分の意思で排泄することができず、母犬にお尻を舐められた刺激によって反射的に排泄を行います。母犬は子犬のお尻を舐めて排泄を促しながら、子犬のウンチを舐めとってそのまま食べてしまいます。

この母犬による食糞行動には、「巣穴を清潔に保つため」「ウンチのニオイによって外敵に気付かれてしまうことを防ぐ」といった理由があると考えられています。

生後3週間頃から、子犬は母犬からの刺激がなくても自力で排泄できるようになり、徐々に巣穴から離れた場所で排泄する習慣が作られていきます。また生後8~9週間頃には、排泄物のニオイを頼りに特定の場所で排泄するようになっていきます。

探索行動の一環として

好奇心旺盛な成長期の子犬は、五感を最大限活用して身の回りから様々な情報を吸収し、自分がこれから生きていく世界について学んでいきます。

人間の赤ちゃんが身の回りにあるものを何でも口に入れてしまうのと同じように、成長期の子犬も家中のものを口にくわえてみたり、咬んでみたりします。

この探索行動の一環として、子犬自身のウンチや他の動物のウンチを食べてしまうことがあります。

一般的に、このタイプの食糞行動は子犬の成長とともに治まっていくといわれています。

退屈や欲求不満のはけ口として

長時間お留守番をしていたり、ケージに長時間閉じ込められていたり、お散歩や運動が不十分だったりした場合、「退屈や欲求不満のはけ口」として身の回りにあるものを咬んだり壊したり食べてしまったりすることがあります。

特にお留守番やケージの中にいる時間が長いワンちゃんの場合、ウンチが片付けられることなくずっとそばにあるため、退屈や欲求不満のはけ口の対象として食糞行動が選ばれやすくなってしまいます。

ウンチのニオイや味が好きだから

人間からするとなかなか理解しにくいかもしれませんが、ワンちゃんの中にはウンチのニオイや味を好む子がいます。

ちょっと不思議な話ですが、ワンちゃん自身のウンチよりも、ネコちゃんのウンチを好んで食べる子が多いともいわれています。

おなかが空いているから

早食いのワンちゃんや、ダイエット中で食事量を減らされているワンちゃん、ステロイド剤などの食欲が増える作用のあるお薬を投薬中のワンちゃんの場合は、空腹を満たすために自分のウンチを食べてしまうことがあります。

栄養不足を補うため

食事から摂取する栄養が著しく不足しているワンちゃんや、栄養バランスが極端に偏った食生活を続けているワンちゃんでは、不足している栄養を補おうとしてウンチを食べてしまうことがあります。

近年ではドッグフードの品質が向上しているため、市販のドッグフードを食べているワンちゃんでは栄養不足が原因の食糞行動はほとんど生じないといわれています。

病気による消化・吸収不良があるから

消化管に寄生虫が感染していたり、膵臓の病気で消化酵素が作れなくなっていたり、腸内細菌のバランスが極端に乱れていたりすると、食べ物の栄養をうまく消化・吸収できなくなります。

このような病気をもつワンちゃんでは、できるだけ多くの栄養を体に取り入れようとしてウンチを食べてしまうことがあります

成犬になっても食糞が治まらないのはなぜ?


食糞行動が生じる理由はワンちゃんごとに様々です。

しかし、多くの場合「探索行動の一環として」「退屈や欲求不満のはけ口として」のどちらかが原因となっています。

十分なお散歩・運動の時間を毎日設けていれば、ワンちゃんの成長とともにこれらの食糞行動も治まっていくのが一般的です。

では、なぜ成犬になっても食糞の習慣が治まらないワンちゃんがいるのでしょうか?

実は、オーナー様がワンちゃんの食糞をやめさせようとして取った行動が、食糞行動をよけいに悪化させてしまったり長引かせてしまったりした可能性があるのです。

ウンチを取り上げようとすると、よけいに急いで食べるように

愛犬の食糞をやめさせようとしてオーナー様がウンチを取り上げようとすると、「オーナー様に取り上げられる前に急いで食べなきゃ!」と学習することがあります。

この場合はよけいに速く食糞をするようになってしまったり、オーナー様に気付かれないように隠れてウンチを食べたりするようになってしまいます。

オーナー様のリアクションが食糞を「楽しく」してしまう

オーナー様が愛犬のウンチを食べている姿を目撃すると、ついついびっくりした様子を見せたり、食糞をやめさせようとして大声を出したり、慌ててしまうものです。

その様子は愛犬の目には「オーナー様が楽しそうにしている」「オーナー様が構ってくれる」と映ってしまい、「ウンチを食べると良いことがある」と誤った学習をしてしまう可能性があります。

成犬になっても食糞行動が治らない理由のひとつとして「オーナー様が愛犬の食糞をやめさせようとして取った行動」が裏目に出てしまい、成犬になっても食糞行動が続いてしまうケースも考えられます。

愛犬の食糞行動への正しい対処法


愛犬の食糞行動をやめさせるためには、以下の対策を合わせて行うことが有効です。

食糞が始まってしまったら諦める

オーナー様が食糞行動をやめさせようとするほど愛犬の食糞行動は悪化し、改善しにくくなってしまいます。

一般的に「愛犬が自分のウンチを食べてしまう」こと自体は体に害を及ぼさないため、ご自宅内で食糞行動が始まってしまった場合は何のリアクションも取らずに、食糞行動が終わるのを待ってあげましょう。

「ウンチを食べる」ことをつまらなくする

多くの場合、ワンちゃんは「オーナー様が駆け寄ってきて喜んでくれる・構ってくれる」ことを期待してウンチを食べてしまいます。

 愛犬の食糞行動が始まったら、一切リアクションを取らずにその場から立ち去って、愛犬を一人ぼっちにしてしまいましょう。

これを続けることで、「ウンチを食べると誰もいなくなってしまって、つまらない」と愛犬が学習し、徐々にウンチを食べる頻度が減っていきます。

ウンチ以外のものに愛犬の注意を向ける

【手順①】愛犬がトイレに向かう姿を確認したら、隣の部屋で「愛犬の大好きなおやつ」を手に持って、愛犬の排泄が終わるまで待ちましょう。

【手順②】愛犬の排泄が終わったら、ウンチを食べ始める前に愛犬の名前を呼んで、オーナー様の元へ来てもらうようにします。

【手順③】愛犬がウンチを食べずに隣の部屋まで来てくれたら「お座り」などの簡単な指示を出して、それに従ってくれたら愛犬をよく褒めながらおやつを与えてください。

※協力してくれるご家族がいる場合は、愛犬がおやつに夢中になっている間に静かに扉を閉め、愛犬に気付かれないようにウンチを片付けてもらいましょう。

※協力してくれる方がいない場合は、「おやつを中に詰められるボール」などのおもちゃや「食べるのに時間がかかるおやつ」を用意し、隣の部屋でおやつを食べてもらっている間に、静かにウンチを片付けるようにしましょう。

 
これを続けることで、「ウンチを食べる」ことよりも「ウンチをしたらすぐにオーナー様の元へ行く」という行動を取る頻度が増えていきます。

絶対に“罰”を与えない

愛犬がウンチを食べてしまっても、絶対に愛犬を叱ったり体罰を与えたりしないでください。

ワンちゃんは罰を与えられても「ウンチを食べると嫌なことがある」とは学習してくれません。「この人の前でウンチを食べると嫌なことをされる」と学習してしまい、オーナー様から隠れてトイレ以外の場所で排泄するようになったり、以前よりも急いでウンチを食べるようになったりしてしまいます。

また、罰を与えることによって人間に対する恐怖心を抱いてしまったり、大きなストレスを抱えてしまったりします。これによって食糞行動以外の問題行動に発展してしまったり、ワンちゃんの社会性や健康に深刻な悪影響を与えてしまったりする可能性があります。

愛犬の食糞行動は「やめさせようとする」のではなく、「ウンチを食べるモチベーションを下げる」ための工夫を行うことが重要です。

お散歩中に他の動物のウンチを食べてしまう場合の対処法


ワンちゃんが自分のウンチを食べてしまう場合は体調に影響を与えないことが多いのですが、お散歩中に遭遇する他の動物のウンチを食べてしまうと、体調を崩す原因になってしまう可能性があります。

動物のウンチに限らず、お散歩中に落ちているものを拾い食いしないように、以下のような工夫をしてあげましょう。

見通しの良い場所でお散歩をする

できるだけ見通しの良い場所を通るようにして、ワンちゃんが口にしてしまいそうな動物のウンチやゴミなどが見えたら近づかないようにしましょう。

リードを引っ張らずにお散歩ができるように練習する

リードを引っ張らず、常にオーナー様の近くを歩いてお散歩ができるようにしておくと、動物のウンチなどを口にしてしまう前に方向転換がしやすくなります。
 

①リードがぴんと張った状態になったら立ち止まる

② リードが引っ張られておらずゆるんだ状態になったら歩き始める

 
これを繰り返すことで、「リードが張っていると前に進めない」とワンちゃんが学習し、お散歩中にオーナー様の近くを歩いてくれるようになります。

「離れて」の練習をする

日頃から「離れて」の指示に従ってくれるように練習しておくことで、落ちているウンチを食べる前にその場から離れることができます。

 

「離れて」のトレーニング方法

①おうちの中でワンちゃんにリードを付けます。

②ボールやおもちゃなど、ワンちゃんが拾いたくなる物の近くまで一緒に歩きましょう。

③ワンちゃんがおもちゃに近づいたときに、優しく「離れて」と声をかけ、リードを引いてワンちゃんの顔の向きを変えてあげましょう。

④ワンちゃんがオーナー様の方を向いてくれたら、おやつを与えてよく褒めてあげましょう。

これを繰り返すことで、リードを引かなくても「離れて」の声でワンちゃんが顔の向きを変えてくれるようになります。

まとめ

今回は、オーナー様を悩ませてしまうことの多い「ワンちゃんの食糞行動」について解説しました。愛犬の食糞対策の一助となれば幸いです。

食糞行動そのものは体に害がないことが多いのですが、下痢や軟便といったウンチの状態の変化、食欲の変化、体型の変化など、ワンちゃんの様子の変化を伴っている場合は、食糞行動の背後に病気が隠れている可能性があります。

愛犬の様子に少しでも気になる点があれば、まずは動物病院までご相談ください。

<参考文献>
Amy L. Pike/Debra F.Horwitz著、Blackwell’s Five-Minute Consult Clinical Companion Canine and Feline Behavior Third Edition、WILEY、2026年
Gary Landsberg/Lisa Radosta/Lowell Ackerman著、Behavior Problems of the Dog and Cat Fourth Edition、ELSEVIER、2024年
Sagi Denenberg、Small Animal Veterinary Psychiatry、CABI、2021年
Julie K. Shaw/Debbie Martin著、Canine and Feline Behavior for Veterinary Technicians and Nurses、WILEY、2015年
Karen L. Overall著 森裕司監修、「動物行動医学 イヌとネコの問題行動治療指針」、チクサン出版社、2003年
武内ゆかり/久世明香/藤井仁美/森 裕司著、「イヌとネコの問題行動診療入門マニュアル」、2025年、ファームプレス
水越美奈著、犬と猫の問題行動の予防と対応、緑書房、2018年

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